だから今度、言うのは果歩のほうだった。

「そんなふうに……翔さんのほうこそ、言わないで」

 まだ声は少し震えていたけれど、はっきり言った。

 翔にこれ以上、自分を責めてほしくない。

 きっとその気持ちは翔に伝わってくれた。

 翔はまだ少し困ったような、切なそうな顔であったけれど、笑みを浮かべようとしてくれたから。

「……ありがとう」

 視線が合う。

 お互い、明るい顔ではなかった。

 満面の笑みではなかった。

 でも、とても優しい視線が交錯する。

「果歩、これからのことなんだが」

 翔が不意に、違うことを切り出した。

 ここまでのことではない、これからの話だ。

 果歩は悟り、しっかり座り直した。

「……うん」

 もうわかっていた。

 翔がどう言ってくれるのか、なんとなく。

 思い上がっていることかもしれない、なんて今は思わない。

 だって、自分はこれほど翔に大切に想われているのだから。

 ちゃんと告白してから結ばれたかったとか、そうできなかったのを悔いてしまったとか、そんなふうに言ってくれるほど、大切にされているのだから。

 きっと自信を持っていいところなのだ。