「果歩、招いてくれて本当にありがとう」

 お茶をお互いひとくち飲んでから、翔が切り出した。

 果歩は笑みを浮かべてみせて、軽く否定する。

「ううん、私こそありがとう。話をしたいって言ってもらったこと、嬉しく思うよ」

 笑顔にか、言葉にか、翔も少し緊張がほぐれたという顔をする。

「そうか? そう言ってくれるなんて、本当に果歩は優しいよ」

 それで本題に入った。翔が話し出す。

「まず、あのときについて話していいかな。……朝、いきなりいなくなるなんて、本当に悪かった」

 今度は腰掛けている腿に手をつき、頭を下げてくる翔。

 こうされるのは予想していたとはいえ、直面すれば、やはりおろおろしてしまった果歩だった。

「い、いいよ、頭なんて下げないで……。でも……理由は聞いていい、の?」

 慌てて制してから、言った。

 この様子では話してくれるのだろうと思ったけれど、翔は顔を上げて、頷いた。

「ああ。すべて話そうと思ってここに来た」

 翔が話しはじめる。

 それは果歩が翔と知り合う前のことにまで関わる話だった。

「恥ずかしながら、あまり女性との交際が上手くいったことがないんだ」

 果歩は翔の向かいで、気まずそうに切り出された話を静かに聞いた。