「……ああ。うん、別に平気だよ」

 だから安心させるように言って、微笑む。

「確かにびっくりしたし、動揺したけど……。きっと悪いようにはならないと思うの」

 微笑で言った果歩。

 さっき、心から感じられたことをそのまま言った。

 母はまた、丸い目で数秒黙った。

 そうしてから息を吐き出す。感嘆のようなため息だった。

「あなた……、いつの間にか、立派なママになっていたのねぇ」

 そのため息で言われた。

 果歩はくすぐったくなってしまう。

 褒められたけれど、そしてその言葉が示していることはわかるけれど。

「え、やだな。もうずっとママだよ」

 正直に肯定するのは気恥ずかしくてそう言ってしまったけれど、母がもっとはっきり言ってきた。

「そうじゃないわ。強くなったねってことよ」

 今度、母はやわらかな笑顔になっていた。

 果歩の胸が、とくん、と高鳴る。

 自分が強くいられるのは、航がいてくれるから。

 そして、それだけではなく、航を一緒に育ててくれる、この母と、それから父がいてくれるから。

 自分だけだったら、こんなふうになんてあれないのに、母はそう言ってくれる。

 ……本当に優しいお母さん。

 果歩は感じ入った。

「……ありがとう」

 今度こそ、素直なお礼と肯定が出てきた。

 ふっと笑って言った果歩に、母も安心したようだ。

「果歩がそう感じられるなら、きっと大丈夫ね」

「うん。そうだと思う」

 果歩は自信を持って頷く。

「それならいいの。……落ち着いたら、私とお父さんにも翔さんを紹介してね」

 母はそんなふうに言ってくれて、果歩は嬉しくなってしまった。