「わかったわ、フィオナは私が必ず取り戻す。でもミリアムには魔女の掟に従って、封印の儀をしなければならないわ」
「それは覚悟の上よ。フィオナが戻ってくるなら、なんてことないわ」
ミリアムは優しく微笑んで処罰を受け入れる。私はギリッと奥歯をかんだ。魔女の掟は絶対だ。厳格に遵守するからこそ、魔女が特別な存在としていられる。
わずかに震える手をミリアムの額にかざした。
【禁忌の制約】
ミリアムの美しいエメラルドの髪は白くて艶がないものに変わり、ハリがあった肌は水分が抜けた果実のようにしわくちゃになって色褪せた。真紅の瞳は輝きを失い、白く濁ってヘーゼルの色を帯びている。
「っ! 聞いた限りではミリアム様は被害者なのに……」
その著しい変化にイリアスが声を上げた。冷酷な印象は受けるけど、いつも筋の通った話をしていたと思い返す。
ミリアムは確かに被害者でもある。そんなことはわかっている。だけど。
「……これが私たち魔女の掟よ」



