婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!


「それで、この街の魔女で間違いないのですか?」
「間違いないわ。解呪した時に魔力の残滓(ざんし)を感じ取ったけど、これは魔女ミリアムのものよ」
「魔力の判別ができるなんて……!」

 イリアスはものすごく驚いた様子で言葉を失っていた。なんだろう、私がそんなこともわからないと言いたいのか。解呪して闇魔法に変換して取り込んでいるうちに、そのクセみたいなものが読み取れるようになっていたのだ。

 これくらいならリリス師匠もできると思うけど。

 ともかく魔女ミリアムはいつも穏やかで、七歳になったばかりのひとり娘フィオナを大切にしていた。何度か会ったこともある魔女だった。

 彼女がどうして……?

 鉛のように重い気持ちを抱えたまま、目の前の古びた一戸建ての戸を叩く。

「フィオナ!?」
「……お久しぶり、ミリアム。私が来た理由がわかるわね?」

 私の言葉にミリアムは憔悴しきった顔を歪めた。久しぶりに会ったけれど、なんだか様子がおかしい。

「セシル……! そんな、どうしたらいいの……?」
「なにか、あった?」