「えー、イリアスもいなくて大丈夫だよ? みんな忙しいし、ほら、魔女って強いし」
「違う、セシルは騙されやすいから、イリアスをつけるんだ」
「ぐっ……! どうしてわかるの!?」
「いや、わかるだろう。隙だらけだ」
なにを言ってるんだと言いたそうな顔にムカつきながらも、確かにいつもレイにうまく扱われていて反論できない。心当たりは大いにあるけど、私だって魔女としてやってきて多少は経験を積んできたのに解せない。
むっつりしていたけど、すぐにイリアスがやってきて、同行することになってしまった。
影移動でやってきたのは、帝国の西に位置するカロンという街だ。
「影移動は初めてですが、なかなか楽しいですね」
「そう? まあ、移動は楽よね」
ちょっとだけ嬉しそうにしているイリアスが意外だった。帝国の冷血宰相として名を馳せるイリアスは、誰に対しても容赦ない。いつも冷たい微笑みを浮かべて、滅多に感情を出すことがなかった。



