婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!


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 私はここ数日間、悩んでいた。

 魔女が悪事を働いたら、魔女が断罪する。それが魔女の掟だからだ。三週間前の文官たちが呪われた件を、レイが捜査したところある事実が判明した。

 文官たちの制服を扱う商会があるのだが、それを運営する貴族が呪いの制服を用意したと言うのだ。その貴族が言うには『魔女に頼んで呪いをかけてもらった』ということなのだ。

 動機については硬く口を閉ざしていて、それ以上の捜査は進んでいないようだ。それを聞いて魔女については任せてほしいと、レイにお願いした。

 私たち魔女はその力を、決して悪用してはならないという掟がある。聖女と同様に特別な存在だからだ。古の魔女が犯した罪を繰り返さないために、連綿と絶対的な掟が受け継がれてきたのだ。

 魔女は魔女によってのみ裁かれる。
 それもまた私たち魔女の掟。

「はあ、気が進まないなあ……でも掟だし、見て見ぬ振りはできないよね」

 覚悟を決めた私は、呪いをかけた魔女の処分についてレイに相談することにした。