「もうよい! お前のような役立たずはクビだ!!」
「……長い間、お世話になりました」
私が成人する前からこの領地で采配をしていた男は、それだけ言って去っていった。こぼれ落ちるのは深いため息だ。
家門の名誉を守るために奔走して、肝心の領地経営が疎かになっていた。取り急ぎ領主代理を募集して、引き継ぎをしなければならない。まあ、いざとなればフューゲルス公爵家に支援を仰げば、乗り切れるだろう。
幸い新しい領主代理はすぐに見つかった。隣の領地からやってきたばかりだというが、領主の補佐をしていたとかですぐに実践で使える男だ。引き継ぎを済ませて、大急ぎで帝都に戻った。
帝都に戻ってまっさきにフューゲルス公爵に面会の約束を入れ、聖女の再検査を受けた貴族たちに連絡をとった。
急いで戻ってきたのは聖女の再検査が、どの程度厳密に行われているかを調べるためだ。本当ならこちらに注力したかったのに、領地の問題だしユリウスは皇城での業務があるから私が領地に戻る羽目になったのだ。
前皇帝の時から聖女を輩出した家門は優遇されていたから、どの貴族も必死になって聖属性持ちの家系の女を妻に娶った。
魔法属性は血筋の特性が色濃く出るものだ。私の風属性はユリウスに引き継がれている。



