三年前からじわじわと魔物の出現率が上がっていたが、被害の程度がそれまでと変わらなかったからだ。このままでは私財を切り崩して、国に貴族税を納めなければならない。
「魔物の討伐数もこんなに減っているとは……なぜ報告しなかったのだ!?」
「手紙は出しましたが……返事がなく、私どもはどうしようもなかったのです」
そういえばユリウスは年に何度も領地へ向かっていた。だが、皇城で出仕するようになって、出世に響くからと私がやめさせたのだ。
「くっ、だからと言ってここまで状況が悪ければ、報告書として出せただろう!」
「それは侯爵様が定期報告以外は必要ないとおっしゃってましたので、そのようにしていました」
私の指摘にいちいち言い返してくる領主代理に苛立って、持っていた書類を乱暴に執務机に叩きつけた。
「セシルお嬢様がまとめてくださった資料をユリウス様が送ってくださいましたが、それでも力が及ばず申し訳ございません」
領主代理を務める男が深々と頭を下げた。
今になって、ユリウスが領地のことをくれぐれも頼むと言っていたのが思い出される。だがもうどうにもできない状況に強く後悔した。



