「ああ、そうだ! 後日、薬をみなさんに配るわ。万人に効くように調合するから、安心して飲んで」
「えっ! 魔女の秘薬を配ってくださるのですか!?」
声を上げたのはイリアスだ。前にあまりにも疲労困憊の様子だったので、調合してあげたことがあったのだ。
「ええ、呪いにかかると体力を消耗するから。みなさん仕事もあるし、早く回復したほうがいいでしょう? 事務仕事なんてしたくないから、元気になってくれないと私が困るのよ」
「それで、俺のセシルに言いがかりをつけた聖女の処分だが、希望はあるか?」
「レイ、もう面倒だからいいわ。どうせろくな証拠もないのよ。次にやったら対処してくれる?」
「……セシルがそう言うなら」
最後にチラリとシャロンを見たら、悔しそうに下唇を噛んでいた。私が反論すらできなかった、あの頃のままだと思っていたのだろう。残念だけど人は成長するのだ。
どうしてあの日のままだと思ったのかわからないけど、興味もなかったのですぐに忘れてしまった。
後日、約束通りに万人向けの丸薬を配布して、今回の解呪の仕事は終わったのだった。
それから毎日ファンレターなる感謝状が届いた。返事が面倒だったのと、たまたまそれを目にしたレイがビックリするくらい冷気を放っていたので、皇帝命令で禁止にしてほしいと頼んだのだった。



