「罪を認めろと言うなら、納得できるだけの証拠を出してくれる?」

 私がここまで言い返すと思っていなかったのか、シャロンは目を泳がせていた。

「証拠がないなら、解呪の邪魔よ。貴女がこうして意味のわからないことを言ってる間も、苦しんでいる人がいるの。目の前にいるのに見えてないの?」

 解呪ができるのは魔女だけだ。
 そしてこの場にいる魔女は私だけだ。

 私の手をとめるだけで文官たちの苦しみが長引くのだ。苦痛に歪む文官たちの視線を、やっと理解したのかシャロンはなにも言い返せなくなった。

 やっと静かになったので、解呪の魔法を発動させる。

【壊呪(ブレイクダウン)】

 私の解呪の魔法は他の魔女が使う【解呪(ディスペル)】とはまったく違う。呪いとなった思念の塊を破壊して、粒子にしてから闇魔法で包んで取り込むのだ。

【完全消滅(ドレイン)】

 会場中の呪いが私の周りに集まって、身体に吸収されるように消えていく。
 これが解呪の魔女と呼ばれる、私の魔法だ。

 いつの間にか会場はシンと静まり返っていた。うめき声が聞こえない様なので、きっちり解呪できたようだ。

「終わったわ。レイ、戻りましょう」
「さすがセシルだ。見事な解呪だった」

 そっと腰を抱き寄せられて、思わず身体がこわばる。違う、勘違いしてはいけない。これは人前だから仲良し夫婦を演じているだけなのだ。

 ただの演技なのに、いつもより甘くてとろけるように見つめてくるのはなんで!?