三年前、私は確かにすべてを失った。
でもあの出来事があったから、今の私があるのも事実だ。
婚約破棄されてなければ解呪の魔女になっていなかった。
城に勤める文官たちを解呪してなければ、フィオナを魔女にしてなかった。
シャロンたちに捕まらなければ、ラウルとルーカスはお客様のままだった。お兄様とも会うこともなかったかもしれない。
なにより悪魔皇帝と契約結婚をしなければ、レイを愛することもなかった。
すべてが今日の私につながっている。
失ったものは多かったけど、形を変えて私の元に戻ってきた。
悲しみも悔しさも人生のどん底も味わった。リリス師匠に可愛がってもらって、家族や婚約者だけから愛をもらうわけではないと知った。
それでもレイは私のことだけを考えてくれて、皇帝を辞めようとしていた。
私は深く愛されてもいいんだと、愛を求めてもいいのだとレイが教えてくれた。
レイが私を諦めずにいてくれたから、今はこんなにも幸せなんだと思える。
私はただ愛してほしかった。他になにもいらないから、絶対的に愛してほしかった。
そんな私の強烈な渇望をレイだけが満たしてくれた。
でもね、きっとレイは知らない。
魔女の血に流れる、欲深く狂愛と呼ぶほどの恋情を。
渇望するほど飢えた魔女に愛を与えたなら、魔女はその男を離さない。
その代わり、私の真紅の瞳も、心も、魂さえも捧げて愛し抜く。
罪深い強欲な魔女の血に誓って、私が愛を注ぐのはレイだけだ。



