婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!


「でも、待って。それなら、もしかしてレイは最初から私を好きだったってこと?」
「そうだが?」
「え、じゃあ、あの仲良し夫婦のふりっていうのは、演技じゃなかったの?」
「ああ、もちろん。演技などしていない」

 えええええ! それなら、私が感じてたのは勘違いじゃなかったの……!

「もっと早く知りたかった……」
「それは、すまなかった。お詫びにこれからは全力で愛を囁こう」
「いや! もう十分だから! これ以上甘い空気になったら胸焼けしちゃうから!」

 泣きそうな私をじっと見つめるレイに、ドキンッと心臓が波打つ。

 アッシュブロンドの艶髪が、サラリと風に揺れる。太陽の光を受けて輝く金髪と深い海色の青い瞳は、真夏みたいに熱を孕んで私を(いざな)う。

「セシル」

 耳に届く声はほんの少し掠れていて、甘く切ない。

「俺の女神。今までもこれからも、俺が愛するのはセシルただひとりだ」

 私の手をすくい上げて、レイは指先に柔らかな唇を落とした。そこから広がる甘美な熱は、胸の奥を焦がしていく。

「セシルの望みはすべて叶えよう。君が望むなら世界さえも手に入れる」

 レイにどこまでも深い愛を注がれて、私は溺れそうなほど甘やかされた。