婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!


「ね? 美味しいでしょう?」
「これは……確かに癖になる美味さだな」

 レイとこうして串焼きが食べられるのが本当に嬉しかった。お兄様も少し離れたところで護衛としてついてきている。仕事中だから買い食いはしないだろうから、最後にお土産として買って帰ろう。

「セシル、他にも行きたいところはあるか?」
「え! いいの?」
「ああ、前に街へ来た時はあまり回れなかったから、今日はセシルの行きたいところに行こう」
「レイ、ありがとう!」

 前回は解呪の仕事場にしている家の購入をして、植物園で休んで夕食を食べて帰ったのだ。ちょっとした行き違いから、せっかくのデートを楽しめなかったから今日はリベンジしたい。

「じゃあ、レイと行ってみたいところがあったの!」
「ああ、どこでも一緒に行く。ほら」

 海のそこのような深いブルーの瞳を細めて、レイは優しく微笑む。差し出された手のひらにそっと指を乗せれば、もう離さないというみたいに指を絡めて手を繋ぐ。