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帝都ジュピタルはこの大陸一の大都市だ。
街は人であふれ、最先端の流行が発信され、なにもかもが充実している。もちろん美味しいものもたくさんあった。
朝と言っても昼に近かったけれど、私が起きたら侍女たちにあっという間に出かける準備をされて、気がつけばレイと馬車に乗って街まで出ていた。そうしてやってきたのは、屋台が集まる街の広場だ。
「ほら、セシル。これが食べたかったんだろう?」
「うん! はああ、この屋台が残っててよかった……」
私はレイが手渡してくれた、焼きたての串を受け取った。甘辛いタレがかけられた牛肉の串からは、食欲をそそる匂いが漂っている。
この串焼きは、お兄様がよく私にお土産で買ってきてくれたものだった。最低限の食事しか与えられなかった私には、お兄様がお土産と言って買ってきてくれる串焼きがご馳走だった。
ひと口頬張ってみれば、香ばしい匂いにブラックペッパーがピリッとアクセントになって、あふれた肉汁と甘辛いタレが口の中で運命の出会いを果たす。
「もう最高に美味しい! このタレとお肉なら毎日食べられるわ!」
実際に薬屋で仕事をしていた時は、本当に毎日通い詰めていた。時にはフィオナに買ってきてもらうこともあった。
「そんなにこの屋台の肉が好きなのか」
「だって美味しすぎるんだもの。レイも食べてみて」
私が促すと、レイもひと口頬張って目を見開く。



