婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!


 セシルの顔がみるみる赤く色づいていく。耳まで赤く染め上げて、俯いてしまった。

「俺にセシルの愛をくれるか?」

 頬を薄紅色に染めて、恥ずかしそうに顔を近づけてくる。もう何度も肌を重ねているのに、いまだに慣れないらしい。そんなセシルも愛しくてたまらない。

 そっと触れるだけのキスに顔が緩む。だけど俺の欲望は底なしで、もっとセシルがほしいと渇望するんだ。

「もっと、これじゃ足りない」
「ええ……もう無理……!」

 涙目の女神にたまらなくなって、貪るようなキスで俺の狂いそうな愛を伝えた。



 それから二週間後の朝のことだった。

「陛下、少しはセシル様のことも考えていただけませんか?」

 眉間に皺を寄せて進言してきたのは、セシルの兄であるユリウスだ。これ以上ないくらいセシルのことを考えているが、まだ足りないのだろうか?

「いったいなにを言いたいんだ? セシルを一番想っているのは俺だぞ」
「いえ、セシル様のことを一番考えているのは兄である僕です。陛下の欲望にまみれた下衆な思考と一緒にしないでください」

 欲望にまみれたとは失礼な。だが反論できないほど、セシルを日々貪っているからぐっと呑み込んだ。これでも義兄なのだ。