婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!


「そんなの私にはわからないわよ。思ってるだけで、伝わるわけないでしょ!」
「そうだな、ごめん。でも僕はずっとセシルを大切に想っていたよ。だから父上の不正の証拠を陛下に提出して、協力を仰いだんだ」
「……どれだけ大切に想っていたかなんて知らないわ」

「そうだな、言わなければ伝わらないな。まず僕の婚約者はセシルの味方になってくれる家門で探している。それから侯爵家のセシルの部屋はそのままにしてあるから、いつでも戻ってくるといい。もちろん陛下がおかしなことをしてセシルを傷つけたら、攫ってでも連れて帰るつもりだ。あと、数人の侯爵家の諜報部隊をセシルにつけているから、この前みたいにフューゲルス公爵に拉致されても、すぐに駆けつけられる。あの時もすぐに陛下に報告したから、今回の報奨をもらえたんだ。さらに——」

「わかったわ! もういいから!!」

 まさかの内容に悲鳴を上げそうになった。
 兄の言っていることがおかしいと感じるのは私だけだろうか?

「そうか? まだあるんだが……いや、僕がセシルを大切に想っているとわかってもらえればいいんだ」
「もう、よくわかったわよ……じゃあ、お兄様は私を見捨てたわけではないのね?」
「もちろんだ、あの時も金貨を用意するくらいしかできなくて、それも受け取ってもらえなくて心臓が潰れそうだった」
「だって……見捨てられたと思ってたから」

 真実は違っていた。私はちゃんと家族に愛されていた。