「お兄様……」
「兄君のユリウスは今マックイーン家の当主として、俺に忠誠を誓ってくれている。今回の反乱での情報収集でも大いに功績を残してくれた。そこで報奨として望んだのがセシルとの面会だ」
「そう。じゃあ、もう用は済んだわね」
冷めた瞳を向ければ、切なそうに顔を歪めたお兄様が俯いた。今さらなんだというのか。
誰も味方がいなくなってしまったあの時に、お兄様は私を見捨てたのに。
「セシル、ユリウスはずっとセシルの味方だった」
「は? なにを言っているの?」
「俺が調べた事実だ。ユリウスは兄としてセシルを大切にしようとしていた。やり方がよくなかったと思うが、理解できないわけではない」
レイが直々に調べたというの? それなら、お兄様が私の味方だというのは嘘ではないの?
確かにあの夜会会場から立ち去る時に、金貨を用意してくれていた。今思えば結構な額だった。
それまでの暮らしでもお兄様だけは私に心を砕いてくれていた。だからこそ見捨てられて一番ショックを受けたのだ。
それが味方だったなんて、信じられない。
「セシル。俺はセシルの幸せだけを願っている。だからセシルに悪影響なら、そもそもこの面会を許可しない」
「…………」
「それでも嫌なら、このまま部屋に戻っていい。無理強いをするつもりはない」
私は、どうしたい?



