それはわかるわーと他人事のように聞いていたら、私にまで飛び火してきた。
「セシル様においても、魔女としての圧倒的な強さに、類まれなる魔力識別能力。万人を癒す魔女の秘薬(ウィッチ・エリクサー)の深い知識までお揃いの方は、他におりません」
「だが、セシルは皇后を望んでいない。それにまた命を狙われないとも限らない」
「え? 私って命を狙われてたの?」
「……ああ、だから俺が皇帝を辞めれば、セシルも安全になると思ったんだ」
なんという衝撃の事実だろう。そんなことまったく知らなかった。きっとレイが私のことを想って密かに対処してくれていたんだ。
「それについては、すでに犯人も捕らえて処理も済んでます。今はなんの憂いもありません」
「それはよかったわ……ねえ、レイは皇帝を辞めたいの?」
「俺はセシルがすべてだ。そもそもセシルを守るために、皇帝になったんだ」
「他には? 本当にそれだけで皇帝になったの?」
レイが美しい顔を歪めて、悩んでいる。
「私ね、レイが皇帝になって街の様子が活気に満ちあふれていて嬉しいと思ったわ」



