「セシルのすべてを俺のものにしたい」
その言葉の意味がわからないほど子供じゃない。でも簡単に頷けるほど経験もない。
昨日だって一緒のベッドで眠ったけど、続いていた睡眠不足と安堵からあっという間に寝落ちしてしまったのだ。嫌ではないけど、単純に心構えができてなかった。
「嫌か?」
そんな風に聞かれたら、答えは決まってる。
「……嫌じゃないけど、でも」
私が答えに困っている間にも、レイからキスが降ってくる。
髪に、額に、頬に、耳に。
愛しくてたまらないというように、触れられて私はぐずぐずに溶かされていく。
「もう、レイ、これ以上キスしないでっ」
「どうして?」
「だって——」
——コンコンコン。
求められて嬉しいって言ってしまいそうになったところで、扉を叩く音がした。こんなに朝早い時間にいったい誰だろうと、疑問が浮かぶ。
「ちっ、邪魔しやがって」
レイがなにか呟いたようだけど、よく聞こえなかった。ノックの音は止まず、鳴り続けている。
「はーい、今開けます」
そうして扉を開いた先にいたのは、いつかと同じブレイリー団長だった。
「おはようございます! 陛下、セシル様、お迎えに上がりました」
「……どういうこと?」
「……どういうことだ?」
見事にレイとハモった。



