婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!


 これはもしかして、毎朝じわじわと寿命が削られていくのではないだろうか?
 せっかく想いが通じ合ったのだから、末長く一緒にいたいのだけど。

「そうか、うん。確かに腹が減ったな」
「でしょ? 簡単なものなら作れるわ」

 朝食を用意しようとキッチンまで向かったところで、レイが後ろから抱きついてくる。

「もう、料理できないから離れて」
「嫌だ。離れたくない」

 なにかにズキュンと胸を撃ち抜かれた。なにこの子犬みたいな可愛さは。
 ねえ、あなた本当に悪魔皇帝ですか?

「でも危ないから。レイが火傷したら嫌なの」
「その時はセシルに薬を飲ませてもらう。ほんの少しも離れていたくない」

 いや、本当にあなた誰ですか?

「なあ、セシル。やっぱり朝食は後にしないか?」
「え、だってお腹空いてるでしょう?」
「だから、セシルを食べたい」
「え、それ——」

 どういう意味か聞こうと振り向いたら、貪るようにキスをされて頭がふわふわと宙に浮いたようになる。まるで媚薬みたいなキスに抵抗する術は、私にはない。