婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!


「仮面の呪いは解けたわ。これが私の気持ちよ」
「——っ!!」

 下を向いたまま動かないレイの耳が、真っ赤に染まっている。
 膝枕した時の比ではない。フルフルと震えているけれど、寒いわけではないようだ。

「レイ。ねえ、顔を上げて素顔を見せてよ」
「セシル……っ!」

 弾かれるように顔を上げたレイのご尊顔に、今度は私が固まった。

 なんなの、これは。なんなのよ。
 なんでこんなに美形なのよ——!!

 なにかを抑え込んでいるような切ない表情は扇情的で。潤んだ瞳はまさしく太陽に煌めく夏の海のようで。薄く開いた唇は、艶めいていて目が離せない。

「ちょ、仮面つけて、仮面っ!!」
「は? なぜだ?」
「なんでもいいから、仮面をつけてー!」
「嫌だ。やっと仮面越しじゃないセシルが見れたんだ。もっとよく顔を見せて」

 ひええええええええええ——!!
 イケメンが! 目が潰れそうなほどのイケメンが目の前にっっ!!