婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!


 よかったのに。レイが幸せなら、それだけでよかったのに。

 私も手を伸ばしていいの?
 幸せになってもいいの?
 レイの隣にいてもいいの?

 私はレイの頬に手を添える。雨に触れてしまって冷えた身体は、火照る私の手のひらには心地いい。

 レイは流れに身を任せるように、私の目の前に仮面をつけたままの整った顔を見せる。そっと呪いの仮面を指でなぞった。
 何度も何度も呪いを紐解くように解呪してきた。時間をかければ、もちろん呪いは解けるだろう。

 でも今の私なら、一瞬で呪いを解くことができる。

 呪いを解く方法はもうひとつ。真実の愛を持って触れればいいのだ。


 私はレイを——愛してる。


 そう気持ちを込めて、呪いの仮面に口づけを落とした。
 カランッと軽い音を立てて、ツタ模様の彫られた仮面が床に転がる。真実の愛を込めて口づけで触れたから、仮面の呪いは解けた。