私はレイが冗談を言っているのかと思った。でも海のような青い瞳は真剣な眼差しで、それが事実なのだと語っている。
「? 新しい妃? なんのことだ?」
「だって、私が必要なくなったから、皇后から解放されたんでしょ? つまり新しいお妃様が来るんじゃないの?」
「……いったい誰がそんなことを言ったんだ?」
感情を押し込めた、地の底を這うような低い声がレイの口からこぼれた。
どうやら、私の勘違いだったようだ。でもそれならどうして私は皇后から解放されたのだろう?
「誰も言ってないけど、そうだと思ってたわ」
「そうか、いや、俺の説明不足だったんだ。セシルは悪くない」
「説明不足ってなによ?」
そこが知りたい。レイがなにを考えて、なにを思って私を解放したのか。
「俺はセシルと離縁してないし、離縁する気もないと言ったのは覚えているか?」
「ええ、それについても聞きたかったの。どういうことなの?」
仮面の奥の青い瞳に、感じたことのない熱が浮かんでいる。まるで私に恋焦がれ、求めるような視線に、ソワソワと落ち着かなくなる。
「俺は……セシル、君を愛してる」
レイの言葉が、私の心に優しく深く染み込んでいった。



