とにかくプレートを変えて、レイにお店の中に入ってもらう。
「ぶつけたのは鼻だけ? 見せてくれる?」
久しぶりにあったレイは少し疲れている様子だったけど、あまり変わりがないようで安心した。
鼻先が少し赤くなっているだけなので、まずは濡れた身体を拭くために乾いたバスタオルを渡した。その間にハンドタオルを水で濡らして鼻先を冷やすように促す。
「元気そうでよかったわ。それで、今日はどうしたの?」
バスタオルを頭からかけた状態で微動だにしないレイに声をかけるも、なにも話さない。
「レイ?」
すると、突然立ち上がりバスタオルを勢いよく剥ぎ取って、膝をついた。
「セシル、どうか聞いてほしい」
「ええ、いいけど。どうしたの?」
レイの様子が変だ。こんなレイは初めて目にする。
「俺は皇帝を退位した」
「——え?」
「もうディカルト帝国の皇帝ではなく、ただの男だ」
「はあ!? なんでよ!? 新しいお妃様はどうするのよ!?」



