その翌日から一週間も雨が降り続いた。

「はあ、今日も雨ね。お客様はもう来ないだろうし、店じまいしましょうか」
「そうですね。では戸締りをしてきます」

 ルーカスがいつものようにさっと立ち上がって、鍵束に手をかける。私はそれを横から奪い取った。

「今日は私がやるからいいわ。たまにはルーカスも早く帰って、ゆっくり休みなさい」
「いえ、ですが……」
「これは業務命令よ。しっかり休むのも仕事のうちなの。ラウルとフィオナだって薬草の仕入れが終わって、きっと今頃美味しいディナーを食べてるわ」

 フィオナは母親の症状を改善するために、今まで試したことのない薬草を求めて隣国まで行っていた。護衛兼保護者としてラウルをつけたのだ。

「わかりました。では、今日はお先に失礼いたします」

 ルーカスが最近通っている食堂のウエイトレスに、心を寄せているのは知っている。口元に笑みを浮かべていたから、きっと帰りに寄るのだろう。

 そうしてひとりになった店内を清掃して、外にかけてあるプレートを【OPEN】から【CLOSE】へ変えようと扉を押し開いた。

 ゴンッと鈍い音がしたと思ったら、短く太い悲鳴が耳に入る。

「ぐっ!」

 誰かにぶつけてしまったのだと、慌てて謝罪した。

「あっ! ごめんなさい! 人がいると思ってなくて、思いっきり開けてしま——」

 そこに立っていたのは、ずぶ濡れで鼻を押さえたレイだった。