婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!


「では離縁の手続きはされていないということは?」
「離縁するなどとひと言も話していない」
「でも皇后のお立場から解放するとおっしゃいましたよね?」
「ああ」
「セシル様からしたら、離縁されると思われたのではないですか?」

 イリアスの言葉が衝撃だった。

 なぜそんなすれ違いの上に勘違いしたような思考回路のなるのか、脳内で思い返す。

 セシルには気持ちを隠さず接してきた。よく耳まで赤くしていたから、多少なりとも俺の気持ちが通じてると思っていた。
 だが思い返せば、後継者が必要だから妻になれと迫り、そのまま気持ちを伝えずに、照れ隠しで散々セシルに絡んでいた。

 そういえば、家を購入する時のセシル様子がおかしくなかったか? セシルとふたりで住む家を購入したと浮かれすぎていて、嬉しくなさそうなセシルに気付いてなかっただけではないか?

 待て、待て待て待て。ちょっと待ってくれ。

「——もしかして、俺はずっとやらかしていたのか?」
「今頃お気付きになったんですね」
「なっ! なぜ言わなかったんだ!?」
「まさかここまでこじれてるなんて思いませんでした。それともおふたりの会話をひとつ残らず拾い上げ、精査した方がよかったですか?」