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俺は皇帝であることを最大限活用して、セシルのために心を砕いた。
溜め込んでいた私財で家を買い、セシルの好きそうな内装で部屋を飾り、安心して暮らせるように治安の面でも万全を期した。
「なのに、なにが気に入らなかったんだ……?」
「全部ではないですか?」
イリアスの遠慮のない鋭く冷酷なツッコミに心を深く抉られる。
「それは……俺の調査が甘かったのか? それともまだ気が付かないところで不便があったのか? なぜ、セシルは俺の買った家に住まなかったんだ!?」
「だから、陛下がそこまですることに納得されなかったのでは?」
「夫なのだから、妻のために心を砕くのは当然だろう!」
「ではお聞きしますが、セシル様にそのお気持ちを伝えられたのですか?」
「……いや、それはまだだ」
はあ、とこぼされたイリアスのため息が胸に突き刺さる。仕方ないだろう。セシルの気持ちが第一優先なんだから。
無理やり妻にしておいてなんだが、他はすべてセシルの心に寄り添うようにしている。夜だって、衝動を抑えるのが大変でずっと寝不足気味だったのだ。



