婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!


     * * *

 俺は皇帝であることを最大限活用して、セシルのために心を砕いた。
 溜め込んでいた私財で家を買い、セシルの好きそうな内装で部屋を飾り、安心して暮らせるように治安の面でも万全を期した。

「なのに、なにが気に入らなかったんだ……?」
「全部ではないですか?」

 イリアスの遠慮のない鋭く冷酷なツッコミに心を深く抉られる。

「それは……俺の調査が甘かったのか? それともまだ気が付かないところで不便があったのか? なぜ、セシルは俺の買った家に住まなかったんだ!?」
「だから、陛下がそこまですることに納得されなかったのでは?」
「夫なのだから、妻のために心を砕くのは当然だろう!」
「ではお聞きしますが、セシル様にそのお気持ちを伝えられたのですか?」
「……いや、それはまだだ」

 はあ、とこぼされたイリアスのため息が胸に突き刺さる。仕方ないだろう。セシルの気持ちが第一優先なんだから。

 無理やり妻にしておいてなんだが、他はすべてセシルの心に寄り添うようにしている。夜だって、衝動を抑えるのが大変でずっと寝不足気味だったのだ。