ふたりが逃げる時間を稼ぐためにさらに地下牢を破壊していく。牢屋についている鉄格子は片っ端から細切れにして、石造りの壁は崩れ落ち瓦礫と化していた。
地下牢から出て階段を登ると、そこも牢屋になっていた。明らかに貴族の女性や子供が捕らえられていたので、壁を壊して外まで出れるようにした。
ここでやっと前方からガチャガチャと鎧や剣のぶつかる音が聞こえてくる。屋敷中の兵士がやってきたようで、ぐるりと私を取り囲んだ。
「あらあら、ずいぶんとのんびりだったわね」
「くっ! 恐ろしい魔女を捕まえるぞ! 全員でかかれ!!」
その掛け声で、騎士たちがいっせいに私めがけて剣を振り下ろしてきた。黒雪の闇魔法を左手にまとわせて振り払えば、悲鳴とともに兵士たちが倒れていく。
魔物相手に戦ってきたのだ、人間相手にやられることはない。
「ふんっ、あなたたちが何人かかってきても無駄よ。大人しくしれば怪我させないわ」
「くそっ、化け物みたいな強さだっ!」
「なんとしても通さないようにとの命令だ! あきらめるな!」
兵士たちの心意気は見事だけれど、相手が悪すぎるのだ。魔女を相手にするなら、人数も足りないし、技量も足りない。
「面倒ね、まとめて眠りなさい」
今度は右手から黒い雪の結晶を放った。兵士たちに触れると霧のように消えて、その意識を刈り取り強制的に眠らせる。
バタバタと兵士たちが倒れていって、残り五人となった時だ。
急に身体が重くなり、息すらできなくなった。



