小さな炎はあっという間に身体の内側を駆け巡り、大きな決意となって力に変わった。
(レイを殺させない。フィオナにも触れさせない。そんなこと私が絶対に許さない)
魔封じの腕輪さえなければ、こんなところからすぐにでも抜け出せる。古代の魔道具なら専用の鍵がなければ外せないから、物理的に破壊するしかない。目の前の鋼鉄製の鉄格子に思いっきり腕輪を振り下ろした。
ガシャーンと大きな音を立てるが、擦った後がついただけで傷はついてない。それでも何度も何度も鉄格子に打ちつけた。
(あきらめない! 絶対にあきらめない! フィオナの笑顔を守るのよ!)
ガキンッ! ガキンッ! ガキンッ!
握りしめた手が鉄格子にぶつかるのも気にせず、とにかく魔封じの腕輪を全力で打ちつけた。
(レイが大切な人と一緒に過ごせるように、守るの! 例え相手が私じゃなくても!!)
ガキンッ! ガキンッ! ガキッ!
(……っ!)
痺れるような鈍い痛みが拳から腕へと駆け抜けた。何度も鉄格子にぶつけたからジンジンと熱を持って赤く腫れ上がってきている。
(ダメ、あきらめちゃダメ。こんなことで挫けるほど、私の心は弱くないから!)
もう一度大きく振りかぶって、鉄格子目掛けて拳を下ろそうとした時だ。
「魔女様っ!」
囁くような若い男の声が耳に入った。



