* * *
冷たい牢屋の床に素足で立っていた。
もうどれくらいそうしていただろうか。今朝までの平和な日々が嘘みたいに、絶望的な状況だった。
今朝はいつもの週末のようにフィオナを送り出して、予約のあった解呪の仕事をしようと店を開けた。先週は急患が駆け込んできたから、結局ゆっくりできなくて薬の調合をしていたのだ。
解呪の仕事が終われば、ゆっくりと湯船に浸かって本でも読もうと思っていた。
やってきたのは三人組の男性で、呪いのアイテムをつけていたのは先週やってきた鎧の青年だったから油断してしまった。解呪している最中に一瞬の隙をつかれて両腕を鎖で繋ぐような腕輪をつけられてしまったのだ。
魔法が発動しないので、魔封じの腕輪だとすぐにわかった。そしてすぐに声がでなくなる魔道具も首につけられた。
『ごめんなさい、本当にごめんなさい……!』
そう言って泣きそうな顔で、黒塗りの馬車に乗せられた私にこっそりと謝ってきた。
ああ、平和ボケしてた自分が悪かったのだと自嘲する。考えなくてもいいことを考えて、無駄に頭を使っていたからだろうか。
それでもフィオナがいない時でよかったと思った。



