婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!


「ふふっ、その格好、よく似合ってるわ。可哀想に、陛下に捨てられたのね」

 姉の顔が歪んで、真紅の瞳が潤んでいく。わたくしは久しぶりに楽しくて仕方なかった。

「ねえ、お義姉様は魔女だから呪いのアイテムを作れるわよね? だったらかわいい妹のために作ってくださる?」

 ブルブルと顔を横に振ってできないと言いたいようだ。わたくしのお願いを断るなんて生意気だ。

「そう、なら一緒に住んでいた子供は処分するわね。話を聞いてもらえないなら仕方ないわ」
「…………!!」

 ガシャンッと大きな音が地下牢に響く。
 必死な形相の醜い姉が牢屋の鉄格子を掴んで、わたくしたちを睨みつけていた。

「セシル、お前自分の立場がわかっているのか? 私たちに逆らえる状況ではないのだぞ」
「そうよ、ほら、このアイテムに呪いをかけてちょうだい。この香炉を使うと呪いが発動するようにして。そうねえ、毒でも煽ったような症状が出るといいのだけど」

 俯いている姉に最後のとどめを刺す。

「いいかしら? 呪いのアイテムを作らなかったら子供は処分するわ。呪いの香炉を作ればわたくしたちはクーデターを起こして、エル様が新しい皇帝になるわ」