婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!


 帝都で暮らすなら、これがあるとずいぶん暮らしやすくなる。フィオナもいるし、ありがたく受け取ることにした。

「ありがとう。じゃあ、もう行くわ」
「セシル様、陛下にお会いにならないのですか?」
「いいのよ。この時間は忙しいじゃない。会いたくなったらいつでも来れるし」

 まあ、来れるってだけで、私からレイに会いにくることはないけど。ついでだから、未練を断ち切るために影のルートを閉じてからお城を出よう。そうすればうっかり影移動で皇城に来ることもないわ。

「確かにそうですね、いつでも顔を出してください。でも他の貴族に見つかるといけませんので、それだけは注意してください」

 イリアスはいつもの冷たい笑顔でそう告げた。
 そんなのわかってる。レイにはもう新しい相手がいるから、私が現れたと知られたら面倒なことになるだけだ。

「ええ、じゃあね、イリアス。お世話になったわ」

 そう告げて、私はフィオナとともに静かに皇城を後にした。