婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!


「こちらが影からの報告と、マックイーン侯爵が調べた関係している貴族どもです。この際ですから一網打尽にしますか?」
「よし、セシルが安心して暮らせるように片付けるぞ」

 報告書には現当主のエルベルト・フューゲルスを旗印として旧派がクーデターを起こそうと画策していると書かれていた。

 こちらの調査では確かに百二十年ほど前に皇族の皇女が降嫁してきたが、子に恵まれず養子を取ったとある。ただ、皇女が嫁いだのは事実だったので公爵のままになっていたのだが、都合の悪いことは見えてないようだ。

 公爵家は皇族の血が流れているという前提だけで、推し進めるつもりらしい。旧派の中でも古くから王家に仕えていた貴族たちは静観しているようだ。

「旧派の中でも歴の浅い家ばかりだな。当然か」
「当主が変わり、マックイーン家の次女を娶ったことも影響しているのでしょう。腹の中は誰よりも醜い女のようでしたから」
「では、そろそろ好き放題やってきたツケを払ってもらおう」
「あー、その顔……容赦する気なしですね。後始末はやりますけど、程々にしてくださいね」

 イリアスがげんなりした顔で深いため息をついた。

 仕方ないだろう、あいつらは俺のセシルを追い詰めたんだ。お陰で俺は女神に出会えたわけだが……まあ、その分くらいは考慮してやるか。

「なんのために俺が皇帝になったのか、わからない奴らには教えないとな」

 セシルをどこまでも追い詰めた上に、気色悪い秋波を送ってきてたあの女。それと元婚約者というだけでも許し難いのに、貴族が集まる夜会の場で婚約破棄を突きつけたフューゲルス公爵。
 このふたりに鉄槌を下すのが俺の役目だ。

 セシルが皇城から去れば、命を狙われることはなくなるだろう。セシルの身の安全が第一だ。だが命を狙った貴族をそのままにはしておけない。

 すべての憂いを片付けて、セシルのもとに行こう。
 そう決心した。