「……少しやりすぎではないですか?」
「なにを言っている、どれだけ注意を払っても、用心しすぎることはない」
「いや、あの強さと聡明さがあれば、街の整備だけで十分ではないですか? 実際に魔女の娘が拐われた時も、私の出番はありませんでしたし」
イリアスから詳細の報告を受けたときは、さすが俺のセシルだと感心したものだ。接近戦もできる魔術士としてイリアスを護衛も兼ねてつけたが、セシルの圧倒的な強さに手を出す間もなかったと聞いている。
「しかし、セシルは人が良すぎるところがあるからな。周辺住人の調査は外せない」
「まあ……そうですね。それではひと月しかありませんから、陛下の影も動かしてください。さすがに時間が足りません」
「わかった。手配しておく」
ともかく俺はセシルがなんの憂いもなく、新生活が始められるように心を砕いた。
裏でそんな準備をしていることはおくびにも出さず、昼食を一緒に摂り日課となっている解呪をするためにセシルの部屋を訪れた。



