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「陛下、いい加減その緩んだ顔を引き締めてください」
「……無理だ。夢だった恋人繋ぎでデートできたんだぞ。少しくらいは堪能させろ」
「いや、あれからもう二週間ですよ。どれだけ堪能したら気が済むんですか」
イリアスが呆れた顔で苦言を呈するが、これは仕方ないと思う。ずっと恋焦がれてきた女性を妻にしただけでなく、仲良くデートまでできたんだ。
夕食の時のセシルだって最高だった。いつものように照れ隠しでからかったら、真っ赤な顔で切なそうに俺を見上げてきて、己の浅ましい衝動を抑えるのに苦労したんだ。
「それより、セシルの家の周辺の摘発は終わったか?」
「はい、三日前に捕らえた賊で最後です。しばらくは大丈夫でしょう」
「順調だな。では次の対策だ。市場から家までの街灯の整備を進めてくれ。地域住民の調査も頼む。とにかく多少費用がかかってもかまわないから、退去させろ。足りない分は俺の個人資産から出す」
幸いにも今までの報奨金やらなんやらを使う暇がなくて、結構な資産があった。皇帝になってからも派手な生活は好まないので、貯まる一方だったのだ。



