「でも……私は罪を犯したわ」
魔女の掟を破ったミリアムはもう十分罰を受けている。魔女の力を封じられ、見た目もすっかり変わり果てた。
「ええ、そうね。でも罰はもう受けたでしょう。それでも気になるなら、ここで贖罪しながらフィオナを育てればいいわ」
「贖罪?」
ミリアムがよくわからないといった顔で聞き返してきた。
「私が作った丸薬が思いのほか好評でね、製作が追いつかないの。配っているのはミリアムの呪いで被害を受けた人たちよ。だからちょうどいいと思うんだけど」
私の言葉に、ミリアムは思案している。チラリとフィオナを見れば、次はどのお菓子を食べようか目をキラキラさせていた。やがて母親としての覚悟をにじませ私に視線を戻す。
「……私がここにいて、セシルの迷惑にならない?」
「ならないわ。文句言う奴がいたら黙らせるだけよ。私これでも解呪の魔女で皇后だから」
「ふっ……ふふっ。まるでアマリリスみたいなこと言うわね」
「私の師匠だから仕方ないでしょ」
そう言ってふたりで笑い合う。リリス師匠は自由で厳しくてめちゃくちゃだったけど、いつも心は温かくて優しかった。そして自分の信念を貫く人だった。
「セシル……ありがとう。給金はいらないから、ここで働かせてほしいわ」
「そんなこと言うなら、給金は倍に増やすわよ?」
「ええ!? なんで倍になるのよ!?」
私と同じ反応をするミリアムにお腹を抱えて笑った。



