待っている間も何度もミリアムはお礼を言ってきた。節くれだった手で涙を拭いながら、笑顔を浮かべる。そこへ侍女が報告にやってきた。
「セシル様、フィオナ嬢の診察が終わりました。少し栄養失調気味ですが、おおむね問題ないとのことです。ただいま身を清めておりますので、準備が整いましたらお連れいたします」
「そう、よかったわ。なるべく早く連れてきてもらえるかしら?」
「承知いたしました」
それから三十分ほどで、フィオナはやってきた。
「ママ!」
弾けんばかりの笑顔で扉を開けて、早に飛び込んできたフィオナはキョロキョロと辺りを見回した。
「あれ? ママ? ママどこ?」
ミリアムは娘が無事だった安堵と、気付いてもらえないことにショックだったのか石のように固まっていた。
私は痛む心を隠して、理不尽な現実を告げる。
「フィオナ、ママはここにいるわ。でもね、ママもルールを破ったから、その責任を取ったの。もうママは魔女ではないわ。見た目も前とは違う。それでも、ママに会いたい?」
「うん、どんなママでも、わたしのママだもん」
フィオナの言葉に目の奥が熱くなる。それはミリアムも同じだったようで、か細い声でフィオナの名を呼んだ。
「……フィオナ……」



