藤堂くん、もっとぎゅっと抱きしめて



どうしたら良いのか分からず動けずにいると、藤堂くんは私の机から学生鞄を取るなり、ノートのコピーを入れているファイルを鞄の中にしまった。


「ほらほら」と背中を押される。


そのせいで強制的に教室から連れ出された。


廊下へ出るなり、私の背中を押して歩く藤堂くんへ振り返りながら視線をおくる。


「あ、あの。藤堂くん、本当に大丈夫だから」

「はいはい。お言葉だけ受け取っておきます。で、このあと普通に家帰んの?」

「いや、この後は……」


この後はかかりつけの心療内科に行かなくてはならない。


どうしよう、このままじゃ「病院に着いていく」とか言いそうだ。家まで送るって言っていたし、藤堂くんのことを考えると一回家に帰って病院に寄った方がいい。けれどそんなことをしていたら病院が閉まってしまう。


――大丈夫。いくらなんでも病院にまでは着いてこないはず。気にしすぎだ。


「病院に……」

「病院?」

「うん。だからあの、病院までで本当に大丈夫なので」

「それってオレも行っていい? 診察室には入らないから」


今日一日で分かった。藤堂くんは頑固だ。


いつもは暇あるときに様子を見に来てくれるだけで終わるのに、今日は何故か一歩も引き下がろうとしてくれない。