水を飲み一息ついた私を見て、

「病院は行ってんの?」

藤堂くんは不安そうな表情を浮かべながら問いかけた。


「うん。近くの心療内科で診てもらってる。でも完治までには3年かかることもあるんだって」

「そっか。でもまぁ、完治はあくまで個人差だからさ、東良らしく過ごしていけばいいと思う」


完治だなんて重い話をして返事に困ることを言ってしまったと、言い終わってすぐに反省した。


私らしく。クラスの、それも男子からそんなことを言ってもらえるなんて思ってもいなかった。


藤堂くんはイケメンなうえに、聞き上手だ。



「私のこと面倒くさくないの?」

「面倒って? そんなこと一瞬でも思ったなら『病院行ってんの?』なんて聞かない。逆に心配だよ、体調大丈夫かなって」


言われてすんなり心に響いた。藤堂くんの言うことはそうだなと納得させられる。


――なので、

「なんでこんなに面倒みてくれるの?」

図々しく聞いてみる。


「んー、オレが保健委員だから、かな」


――当然だ。それ以外に理由なんてない。なんてバカなことを聞いているんだろう。


頻繁に保健室に運んでくれる優しさを、自分の都合がいいように解釈していた。藤堂くんの優しさを勘違いして、意味を履き違ってしまっていた。


「……藤堂くん、もういいよ。もう、大丈夫」


これ以上優しくしないでほしい。


突き放すように『さっさと帰って』と視線を送る。その瞬間、また激しい動悸が私を襲った。


床に座り込み、息を強く吸ったり吐いたりする。


これ以上、藤堂くんに迷惑をかけたくないのに。