私が沢辺さんの立場だったら耐えきれなかった。「病弱なのを良いことに構ってもらえて、卑怯なヤツ」と思ったかもしれない。
それなのに、沢辺さんは凄い。芯があって、凄く強い。
「私、沢辺さん、みたいに、なりたい……」
――嘘偽りない本心を沢辺さんにぶつけた。
「私みたいになったら直哉からフられるかもよ? 東良さんは東良さんのままでいいんだよ。いつ発作が発症するか分からないのに、毎日頑張って学校に来て凄いよ。自分の症状と真正面から向き合っている東良さんだから、直哉は惹かれたんだと思う。私もそういう東良さんを尊敬する」
「私の妹、学校行けてないからさ」と乾いた笑いをする沢辺さんに、私も大粒の涙を流す。他人事とは思えなかった。
沢辺さんの胸を借りて泣いていると、
「あーっ!!!」
数分前に教室から出て行った藤堂くんが、私達を見て大声を出した。
「直哉、うるさ!!」
沢辺さんも負けじと声を張り上げる。
「オレ以外の胸で泣いてほしくなかったのに! オレの役割を沢辺が取ってんだからうるさくもなる!」
「いや、惚気んな! それより保健室どうなったのよ!」
「そうだった。6時まで貸してくれるって」
泣いている私を沢辺さんから取り上げるように、ひょいっとお姫様抱っこで持ち上げられた。沢辺さんは藤堂くんに細い目を向けている。
「今時お姫様抱っこって……」
「オレにとってはお姫様なんで!」
藤堂くんは物凄く臭いセリフを吐いて、私を抱っこしたまま教室を出た。



