藤堂くん、もっとぎゅっと抱きしめて



結局全然引き下がる気がない藤堂くんを連れて、病院に来てしまった。


いつものように受診をしてもらい、抗うつ薬と安定剤を受け取りお会計を済ませる。そして、藤堂くんの元へ駆け寄った。


「終わった?」


読んでいた本をパタンと閉じ、私に視線を向ける藤堂くん。


診察からお会計を終えるまで1時間も待たせてしまった。


「待たせてごめん……」

「何て言われた?」


まるで保護者みたいなことを聞いてくる。


「あ、うん。今のまま薬を飲んで治療していきましょうって」

「そっか。オレもできる限り協力するから」


「だから頑張ろう」と、頭をクシャッと撫でられた。


藤堂くんがくれる行動一つ一つを意識してしまうのは、きっと、私の恋愛経験が疎いからだ。


藤堂くんは、たまたま同じクラスで、たまたま保健委員になった。だからここまで良くしてくれるだけだ。それ以外に理由はない。


病院を出て家までの道中、

「あのさ、言いたくないのは百も承知なんだけど。一つ聞いていい? 何がキッカケでそういう症状出るようになった?」

――藤堂くんは濁しながら問いかけてきた。


あの時のことを思い出すのは今でもツライ。だけど、ここまで良くしてもらって答えないわけにもいかない。


あまりイヤなことは思い出さないように、藤堂くんに意識を集中させる。