S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす


 久しぶりに会っての第一声がそれ? キスして別れたのに? あの時の甘い彼はいずこへ……!?

 背の高い彼はただ見下ろしているだけかもしれないが、その視線は嘲っているようにも見えてくる。むくむくと怒りが湧いてきて、私の眉間のシワが深くなる。


「もちろんこれからもう一度します! というか、まだ開館前なのに我が物顔でやってくるあなたもどうかと思いますが?」
「客として来たわけじゃない。業者だって、打ち合わせには閉館中に来るだろう」
「じゃあ、あなたはなんの用で……」
「花詠に話があって来た」


 温かみを感じない口調を続ける彼に頭を抱えたくなっていると、急に意味深なことを言うのでピクリと反応した。


「どこかふたりきりで話せる場所はあるか? たいして時間はかからないから」


 大事な話なのかと思いきや、そうでもなさそうで再び脱力する私。なのにふたりきりになりたいって、この人の考えはよくわからない。


「時間のかからない話ならこのロビーで聞きます」
「親父さんに会ったらまた険悪になりそうだけど、それでもいいなら」
「うっ」


 確かにエツと話しているのを見られたら、また父の怒りの導線に火が点いてしまうかもしれない。石動グループへの敵対心が強くなっている今はなおさら。