窓際のこぢんまりとしたテーブル席に向かい合って座り、店内をぐるりと見回すと自然に表情がほころんでいた。
「アットホームな感じで可愛らしいお店だね。なんか意外。もっと高級レストランみたいなところで食べてるものかと」
「しょっちゅうパーティーがあるから、普段はこういう庶民派な店に来たくなるんだ」
そう言いながら手書きっぽいメニューを差し出す彼に、私は羨望の眼差しを向ける。
「やっぱりパーティー三昧なんだ。華々しいねぇ」
「そんなにいいものでもないぞ。三回も出れば飽きる」
ドライだなぁ。各国の要人や著名人とのパーティーなんて一般人からしたらものすごいことなのに、しれっとしているこの外交官様は大物だわ。
レベルが違いすぎて、感服の域を超えてもはや呆れてしまう。料理もお任せすると、お昼に食べたタルト・フランベ以外のおすすめのものをささっと決めてくれた。
そこで、エツはふいにメニューから顔を上げる。
「花詠は酒飲める?」
問いかけられて、そういえば私がお酒を飲むかどうかも彼は知らないのだと気づかされた。本格的に会わなくなったのは、私が高校三年の頃だったから。



