S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす


 エツとふたりで、メシ……食べたのはいつが最後だっけ。

 もう思い出せないくらい昔だから、食事するだけでまた緊張が押し寄せてくる。そうだよね、泊まるだけじゃなくて当然ご飯も食べなきゃね。

 ドキドキそわそわし始める私を見て、エツは不思議そうに首をかしげる。


「なに? 金なら心配しなくていい。軽くお前の倍以上は稼いでる」
「ひと言余計じゃない?」


 私は口の端を引きつらせた。重々わかってますよ、在外公館勤務の外交官が高給取りだってことは。

 食事代くらいは払うつもりだったけれど、確かに彼にとっては微々たるものだろうし、ありがたくごちそうになろう。


「じゃあ、お言葉に甘えて。エツのお気に入りのお店に行きたいな」
「了解」


 私のリクエストに、彼は軽く頷いた。

 エツの好きなものを一緒に食べられるのも嬉しい。内心ニヤけまくっていると、彼はふいに例の自販機らしきものを指差す。


「それにしても、これをまじまじ見てたけど興味あんの?」
「あー、興味あるっていうか、なんの自販機なのかなって思って」
「Préservatifだよ」


 フランス語ではわからず、眉をひそめて首をひねる私。