でも、やっぱり大人の男女がふたりで一夜を過ごすっていうのは危険なわけで……。
いや、もう決めたんだから変な風に考えるのはやめよう。下心があるのは自分のほうじゃないかとツッコみたくないし。
広がりそうになる妄想を掻き消し、目の前の壁に設置された縦長の箱に意識を向ける。この自販機っぽいものがなにかを考えることでしか気を紛らわせられなさそう。
商品らしき画像とボタンがいくつか並んでいて、お金の投入口と取り出し口がついている。それをじっと眺めて気を落ち着かせていた時、こちらに近づいてくる人の気配を感じた。
「やっぱり欠航になったな」
振り向くと同時に耳に届いたのは、馴染みのある声。ビジネスバッグを手にしたエツがわずかに口角を上げていて、私も自然に表情が明るくなるのがわかった。
たった数時間ぶりの再会なのに、こんなに安堵して嬉しくなるのは、たぶんひとりで心細かったからというだけではない。
「エツの言う通りだったね。仕事終わったの?」
「ああ。せっかくだからどこかで飯食って帰ろう」
腕時計を見下ろす彼にさらりとそう言われ、私はキョトンとした。



