S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす


 もしかしたら、また昔みたいに戻れるかもしれない。あの頃は、そんな風に淡い期待を抱いていたのに──。



「まさか自宅にお邪魔するまでに、さらに七年もかかってしまうとは……」


 在ストラスブール日本国総領事館が入居しているレ・アールというショッピングセンターを見上げ、私はなんとも言えない気分でひとりごちた。

 時刻は午後四時五十分。幸か不幸か、結局彼を頼りにすることになってここへ来ている。

 クレベール広場でエツと別れたのが、今から約三時間前。とにかく航空会社の情報が出ないことにはどうにもならないので、とりあえず観光を続けることにした。

 世界遺産でもある大聖堂は繊細な彫刻が素晴らしく、目の前一面に広がる美しいステンドグラスや、教会内にある大きな天文時計も圧巻だった。それはもう、自分が置かれている状況を忘れそうになるくらい。

 見学した後は、近くにあるパティスリーでパイナップルとフロマージュ・ブランのアイスを食べてひと休み。この地域はフルーツが豊富ということもあり、カラフルで珍しい味のアイスがたくさんあって目移りしてしまった。