S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす


 さっきまでの悔し涙とは違う熱いものが、一気に込み上げて視界がぼやける。彼女たちを一喝してくれたのもそうだけれど、私の頑張りを認めてくれる人がいることがただただ嬉しかった。


『……ありがと』


 震える声で伝えた感謝は、すぐに去っていった彼に届いていただろうか。彼と接してこんなに温かな気持ちになったのは約十年ぶりだった。

 ──その後、彼女たちは態度を改めるどころか、エツに守られたことが気に食わなかったようで私を仲間に入れなくなった。しかし、彼のおかげで〝ああ、この子たちとは縁がなかったんだな〟と割り切ることができたので、私は平然としていた。

 そのうち、自分と波長の合う新しい友達が自然にできて、高校生活も楽しく過ごせた。あの女子ふたりは遊び過ぎたのか補習組の常連になっていて、密かにざまあみろと思っていたのは内緒である。

 この一件があってから、私はふと彼のことを考える時が多くなっていた。

 そういえば、エツって根は優しくて頼もしい人だったな。決して悪い人じゃないし、嫌な思いをさせられた記憶なんてない。なのに、どうして私はエツを毛嫌いしていたんだっけ。