止めようとするも間に合わず、私はどぎまぎしつつ壁に隠れて様子を窺う。女子ふたりは突然現れた高嶺の花の先輩に、飛び上がりそうなほど驚いていた。
『い、石動先輩っ⁉』
『暇つぶししようと思ってたら、楽しそうに話してたから。俺も交ぜてよ』
絶対そんなつもりじゃないはずなのに一体なにを考えているんだろうかと、口元にだけ笑みを作っているエツを盗み見る。
彼に話しかけられて断る人はそういない。彼女たちも頬をピンク色に染め、『同じクラスの友達なんですけど、あたしたち嫌われてるみたいでー』と、わざとらしく眉を下げて続きを話し始めた。
私も黙って聞いていたが、忙しいフリをして連絡も返さないとか、若女将なんてダサいとか、ただの悪口が次々流れてきて心が重く沈んでいく。
連絡する暇もないくらい働いているのが虚しくなってくる。あんまりバカにされると、好きな仕事も嫌いになってしまいそう。
エツはこれを私に聞かせるつもりで話に入っていったの? だとしたら、本当に意地の悪い男だ。
じわりと瞳に涙が滲み、下唇を噛む。もうこんなところにいたくない。



