『花詠ちゃんってさ、あたしらと仲よくしたくないのかな』
『男っ気ないから誘ってあげてるのに、いっつも断るんだもん。気分悪いよねー』
『家の仕事手伝ってるから忙しいらしいけど、それも嘘かもね』
体育の自習中、友達ふたりの姿が見えなかったので探しに行くと、彼女たちは体育館裏で私の陰口を叩いていたのだ。
最近、ふたりの空気に入れない感じがするなと思っていたら、やっぱりそういうことね。なんとなく予想していたからさほどショックではなくても、当然気分のいいものではない。
私は壁に背中を預け、ため息を吐き出す。その直後、私の向かいにある石畳の道を、ファイルやテキストを片手に抱えたエツが通りかかった。体育館の隣には講堂があり、大学生もよく行き来しているのだ。
こちらを二度見した彼は、私の様子がおかしいことに気づいたのか珍しく話しかけてくる。
『どうした、そんなとこに突っ立って』
『しっ!』
思わず人差し指を口に当てると、彼は怪訝そうな顔で口をつぐんだ。
静かになった瞬間、いまだに笑って私の話をしているふたりの声が聞こえてきた。すると、エツは表情をすっと冷たくして『ああ……なるほど』と呟き、あろうことか彼女たちのほうへ歩いていくではないか。



